こんにちは、店主の鎌塚です。
今日はわたしから、ひばりの一部をご紹介いたします。
ひばりの大きな特徴は、こちらの路地。
路地を抜けた先に玄関、というのは京都らしい景色ですが
ひばりの路地は、他とはちょっと違います。
路地というのは通常、道路に面していない土地に建つ建物へアクセスするためのものです。
風情がいい、奥の景色を想像させるという意図ではなく、狭い区画を有効活用するための実用性からきているそうです。(もちろん違うケースもあるでしょう)
しかしひばりはご覧の通り、どーん!
角地です。道路に面する面する。路地いりません。
では、なんのためにこの路地をつくったのでしょうか?
さぁ、お考えください。
おわかりでしょうか。自信のある方はスーパーひとしくんを置いてください。
正解は、そう、スロープです!
ひばりは、旅することが難しいひとでも、自由な気持ちで旅してほしいという気持ちで設計されました。
なので、足腰の弱い方や車いすの方でも利用しやすいよう、スロープをつくりたかった。
でも、取ってつけたような仰々しいスロープはいやでした。
茶席に生けられる花を「茶花」といいます。
千利休は茶花の在り方を「花は野にある様」といったそうで
自然の風情のままに投げ入れることを、根本としています。
わたしは花を活けられるわけではありませんが、このような日本にむかしからある美的感覚は大切にしたい。
その感覚からいうと、実用性だけのスロープというのはナンセンスです。
安全であることと同じくらい、自然であることもまた、とても重要なことでした。
そこでわたしたちが考えたのが、この「路地スロープ」。
外観上スロープにはみえず、歩ける人もそうでない人も同じ道を自然に利用できること。
路面から入口まで一定の距離がとれるので、勾配をゆるく設定できること。
京都に合う景色をつくれること。
なにより、区画整理などで路地を壊すことはあっても、新しくつくることって中々ないし、おもしろいよね。
という、一石二鳥ならぬ四鳥といえるほど、よいアイデアに思いました。
この四鳥のため、もともとあった四つの出入り口をすべて無視し
(京町家には珍しく、四つもあったんです。)
白い壁にどでかい穴をあけ、古建具を探し、新しいエントランスをつくりました。
こちらは改修時、建物内部から撮った写真。男性の右側、白い壁部分が、現在の玄関です。
ほぼ同じ位置から撮ったアフター写真。以前の面影はゼロですね。
路地にかかる手すりと、玄関の取っ手は木製。
大工さん&設計士さんに、「安全かつ自然!」とわがままをいいました。
路地には誘われるように走ってゆく、鳥の足あと。
足あとをたどれば、いつのまにか床の高さがフラットに。
この路地に入ったら、別世界にきたような、それなのに安心するような。
そんな場所になるよう、つくりました。
いろんな思いからこの路地をつくりましたが、結局いちばんの理由は、路地くぐるときって、なんかわくわくする。ってことだったりします。
この先になにがあるのかなぁ、という旅のおもしろさを味わっていただければ、嬉しいです。
この路地をくぐり、ひとりでも多くの方が旅を楽しんでいただけることを、心より願っております。